アップデート!非財務情報開示の今 第8回 非財務情報の開示を巡る国内外の動向(2022年1月~3月の動向)
「週刊経営財務」(税務研究会発行)3552号(2022年4月18日)に「アップデート!非財務情報開示の今 第8回 リスク管理の取組み 非財務情報の開示を巡る.
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ハイライト
※WEB上の機能制限により リスク管理の取組み リスク管理の取組み レイアウトや箇条書きの表示など 原稿とは異なる場合があります。ご了承ください。
I.はじめに
- 金融審議会/Disclosure Working Group(以下「DWG」という。)における審議
- 経済産業省/非財務情報の開示指針研究会における討議
- 欧州財務報告諮問グループ(以下「EFRAG」という。)によるサステナビリティ報告基準の作業文書の公表
- 自然関連財務情報開示タスクフォース(以下「TNFD」という。)によるフレームワークベータ版(v0.1)の公表
- 米国証券取引委員会(以下「SEC」という。)による気候変動情報開示規則案の公表
- 国際サステナビリティ基準審議会(以下「ISSB審議会」という。)によるIFRS®サステナビリティ開示基準の公開草案の公表
II.金融審議会/DWGにおける審議
- 「サステナビリティ情報」について、以下の取組みを並行して進めていくことについてどう考えるか
- 有価証券報告書にサステナビリティ項目に関する「記載欄」を設け、当初の開示項目として、「ガバナンス」と「リスク管理」は全ての企業が開示し、「戦略」と「指標と目標」は各企業が重要性を判断して開示する。
- 任意開示等において、気候変動関連の開示の質と量の充実を促す。
- サステナビリティ基準委員会(以下「SSBJ」という。)において、ISSB審議会等への意見発信を進めつつ、日本における実務面も踏まえた検討を進める。
- SSBJの検討結果を踏まえ、DWGで改めてサステナビリティ開示の個別項目の取り扱いを議論するとともに、SSBJの役割の明確化に向けた検討を進める。
- 中長期的な課題として、サステナビリティ開示における保証の在り方に関する検討を進める。
- 中長期的な企業価値向上における人材戦略の重要性を踏まえた「人材育成方針」(多様性の確保を含む。)や「社内環境整備方針」の開示を求める。
- 上記の「方針」と整合的で測定可能な指標の設定、その目標及び進捗状況の開示を求める。
- 企業の多様性確保に係る指標として、中長期的な企業価値判断に必要な項目の開示を求めるとしたうえで、企業負担等の観点から、他の法律の定義・枠組みに従って開示する。
III.リスク管理の取組み 経済産業省/非財務情報の開示指針研究会における討議
2021年6月から、経済産業省に設置された非財務情報の開示指針研究会(以下「非財務研究会」という。)で、非財務情報の開示指針の方向性について認識の共有を行いつつ、非財務情報の利用者との質の高い対話につながる開示、及び開示媒体の在り方について検討がされている。2022年2、3月はISSB審議会のTechnical Readiness Working Group(以下「TRWG」という。)が公表したサステナビリティ関連財務情報開示の全般的な要求事項のプロトタイプ、及び気候関連開示プロトタイプに関する議論が行われた。
IV.EFRAGによるサステナビリティ報告基準の作業文書の公表
EUでは、2023年または2024年度からサステナビリティ情報の開示要求を大幅に拡充する方向で、指令の策定(Corporate Sustainability Reporting Directive:CSRD)に向けた検討が進められている。CSRD案では、新たに策定されるサステナビリティに係る報告基準に準拠して情報を作成することとされているが、この報告基準に係る作業文書が、EFRAGから2022年1月より続々と公表されている。
図表1:欧州サステナビリティ報告基準の一覧(2022年1月時点)
- 一般的な要求事項
- 戦略及びビジネスモデル
- サステナビリティに関するガバナンスと組織
- サステナビリティに関する重要なインパクト、リスクと機会
- 方針、目標、行動計画及びリソースに関する定義
- 自社の従業員
- 自社の労働環境
- 自社の機会の平等
- 自社の労働関連の権利
- バリューチェーン上の従業員
- 影響を受けるコミュニティ
- 消費者、最終利用者
- ガバナンス、リスク管理、内部統制
- 製品・サービス、取引先との関係の管理・質
- 責任ある事業慣行
- セクター分類
※開示すべきセクター別情報は、ESRS SEC2からESRS SEC41において決定される(ESRS SEC1 リスク管理の取組み 1項より)。
(出所:PTF-ESRS Batch 1 working papers-Cover note and next stepsより筆者作成)
V.TNFDによるフレームワークベータ版(v0.1)の公表
1.TNFDとは
まず、本ガイダンスの公表主体である自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce リスク管理の取組み on Nature-related Financial Disclosures:TNFD)について説明する。TNFDは、世界の金融の流れを自然にとってマイナスの結果からプラスの結果へとシフトさせるようサポートすることを究極の目的として、自然資本及び生物多様性に関するリスクや機会を適切に評価し、開示するための枠組みを提供することを目標とした国際的な組織である。TCFDに続く枠組みとして、2019年に世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で着想され、2021年に立ち上げられている。日本では、環境省がTNFDの議論をサポートするステークホルダーの集合体であるTNFDフォーラムに参加している。
2.TNFD自然関連リスクと機会管理・情報開示フレームワーク
(3)自然関連リスクと機会を評価するためのLEAP(Locate、 Evaluate、 Assess、 Prepare:発見、診断、評価、準備)プロセス
(出所:TNFD自然関連リスクと機会管理・情報開示フレームワーク ベータ版v0.1リリース エグゼクティブサマリー(日本語)P4より抜粋、一部追記)
(1)自然を理解するための基本(となる知識)
ここでは、自然、依存関係と影響、及び自然関連リスクと機会に関するTNFDの定義を示している。TNFDでは、自然を4つの領域(陸、海、淡水、大気)で構成されると定義し、環境資産(森林、湿地、サンゴ礁、農地など)を地球に自然に存在する生物と非生物の構成要素と定義している。また組織がビジネスプロセスを機能させるうえで依存している生態系サービス(清潔で定期的な水の供給など)を依存関係と定義している。組織は、環境資産や生態系サービスに対してプラスにもマイナスにもなる影響を与えるが、これにより将来の自然関連リスクと機会を生み出す可能性があるとしている。(2)TNFDによる情報開示の提言(草稿版)
情報開示に関するTNFDの提言は、TCFDが既に提案した内容に基づいている。すなわち、図表2のように、情報開示に関するTCFDの4つの柱であるガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標に沿ったものとなっている。なお、指標と目標の温室効果ガスの開示については現在検討中であり、次版以降のベータ版に含められることが予定されている。図表2:情報開示に関するTNFDの提言(草稿版)
(出所:TNFD自然関連リスクと機会管理・豊穣開示フレームワーク ベータ版v0.1リリース エグゼクティブサマリー(日本語)P6より抜粋)
(3)自然関連リスクと機会を評価するためのLEAPプロセス
TNFDの提言には、LEAP(Locate、 Evaluate、 Assess、 Prepare:発見、診断、評価、準備)と呼ばれる自然関連リスクと機会に関する統合評価プロセスが含まれている。LEAPアプローチは、次の4つの中核的な分析アクティビティのフェーズから構成されている。(出所:TNFD自然関連リスクと機会管理・情報開示フレームワーク ベータ版v0.1リリース エグゼクティブサマリー(日本語)P7より抜粋)
VI.SECによる気候変動情報開示規則案の公表
一部の大企業 [2] には、Scope1、2の温室効果ガス排出量について、当初、限定的保証業務を受けるほか、数年経過後に合理的保証業務を受けることが提案されている。現行の温室効果ガス排出量に対する保証業務は限定的保証業務がほとんどであるため、本規則案がそのまま最終化された場合には、開示を行う企業及び保証業務を提供する監査事務所等の双方への影響が大きいものと考えられる。
VII.ISSB審議会によるIFRSサステナビリティ開示基準の公開草案の公表
ISSB審議会は、3月31日に、公開草案「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的な要求事項(IFRS S1)」及び「気候関連開示(IFRS S2)」を公表した(以下「全般的な開示基準」及び「気候関連開示基準」という。)。本公開草案は、本稿3.でも触れた、TRWGによって作成されたサステナビリティ関連財務情報開示の全般的な要求事項のプロトタイプ及び気候関連開示プロトタイプをベースに、全般的な開示基準では定義の明確化、気候関連開示基準では移行計画及びカーボンオフセットに関する情報開示、シナリオ分析の要求事項などが追加されている [3] 。
VIII.おわりに
有限責任 あずさ監査法人
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渡部 瑞穂(わたなべ みずほ)関連リンク
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© 2022 KPMG AZSA LLC, a limited liability audit corporation incorporated under the Japanese Certified リスク管理の取組み Public Accountants Law and a member リスク管理の取組み firm of the KPMG global organization of independent member firms affiliated with KPMG International Limited, a private English company limited by guarantee. All rights reserved. © 2022 KPMG Tax Corporation, a tax corporation incorporated under the Japanese CPTA Law and a member firm of the KPMG global organization of independent member firms affiliated with KPMG International Limited, a private English company limited by guarantee. All rights reserved.
気候変動への取り組み
気候変動に伴う自然災害や異常気象の増加等により、当社グループ各社の営業拠点や通信システム等が物理的被害を受け、事業運営が影響を受ける可能性があります。
2016 年にパリ協定が発効し、2021年には国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)において世界の平均気温上昇を産業革命前と比べて 1.5℃以内に抑える努力を追求する「グラスゴー気候合意」が採択されました。長期目標が定められた結果、各国では、温室効果ガス排出削減の国別目標を国連に提出し、対策を進めています。日本政府も脱炭素社会の実現を目指す2050 年カーボンニュートラルを宣言し、再生可能エネルギー強化を中心とした各種施策を推進しています。
イオングループでは、地球環境及び人間社会に大きな影響をもたらす気候変動の問題に早くから取り組み、2040年を目途に店舗で排出するCO2等を総量でゼロにすることを目指す「イオン 脱炭素ビジョン」を掲げています。 イオンフィナンシャルサービス株式会社(以下、当社)は、2021年11月、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)へ賛同を表明し、持続可能な社会の構築に貢献する経営の推進に向けて気候変動への取組方針を明確化しています。ガバナンス
(1) サステナビリティに関する監督体制
取締役会は、当社の企業価値向上を目指し、機動性を重視するとともに、迅速かつ適正な意思決定を行います。サステナビリティ基本方針の決定及び改定、並びに中長期及び年度活動計画の決定等、サステナビリティに係る重要事項については、サステナビリティ委員会における審議を経た上で取締役会決議事項としています。取締役会は、サステナビリティに関する重要事項について、関係者に必要な指導・助言を与えています。また、サステナビリティ委員会は取締役会からの委嘱事項について、サステナビリティ部会と連携しながら実行し、取締役会に報告を行っています。
このほか、当社は、経営に係る重要事項について、社長の業務執行上の意思決定に関する諮問機関として経営会議を設置しています。また、取締役会の委嘱により内部統制システムの整備に関する事項を総合的・専門的に協議・決定する内部統制推進委員会を設置し、業務の適正と効率性の確保を推進しています。
さらに、当社はグループ各社のリスク管理を統括する部門として、グループリスクマネジメント本部を設置しています。同本部では、当社グループの事業等のリスクの評価について、リスク事象の発生可能性及びその経営への影響度を評価したうえで、総合的に重要なリスクの判定を行っています。各リスクの管理については、年度毎のリスク管理計画を立案し、内部統制推進委員会にて審議の上、取締役会にて決定を行います。また、その実施状況については内部統制推進委員会及び取締役会にて月次でモニタリングを実施し、分析、検討、提言等への対応を協議しています。(2)サステナビリティに関する執行体制
➀ サステナビリティ委員会
当社は、サステナビリティ経営の実現、並びに企業価値の最大化を図ることを目的にサステナビリティ委員会を設置しています。
サステナビリティ委員会は、取締役会の委嘱により経営企画担当取締役を委員長とするほか、常勤取締役、上席執行役員をもって構成します。また、常勤監査役、監査担当役員及び国内外グループ各社社長をメンバーとし、原則として半期毎に開催します。
サステナビリティ委員会は、社会的観点から当社グループのサステナビリティ課題に対してガバナンスを効かせ、企業としてのサステナビリティに関する戦略・方針を決定します。また、サステナビリティに係る具体的な目標や施策に係る実行計画について、検討・審議を行うとともに、実行計画に基づき、当社グループによる取り組みやその進捗状況に関する継続的なモニタリング、フォローアップ(指導・助言)を行います。さらに、全社横断的にサステナビリティ課題へ対応するため、当社各部門並びに当社グループ各社を指導し、施策の実行を統括・支援するとともに、サステナビリティに関する事項を総合的・専門的に協議・検討します。リスク管理の徹底と業務全体のリスク管理の高度化 (平成28年12月現在)
農業者年金基金では、独立行政法人農業者年金基金法に規定する農業者の老後の生活の安定、農業者の確保といった当基金の社会的使命を果たすため、年金財政の健全性を維持し、農業者の皆さまからのご理解と信頼が得られるように、業務上発生し得るさまざまなリスクを適切に管理することに取り組んでいます。
そのため、当基金では、リスク管理の目的、リスクの定義、リスク管理体制、役職員のリスク管理の責務等を定めたリスク管理規程を制定し、同規程に基づき、当基金の業務の特性を踏まえ、リスクを総体的に把握・評価し、リスク管理の徹底を行うことにしています。
また、当基金では、リスク管理の徹底とともに、リスク管理をより高度化していく取組を進めています。リスク管理体制
給付準備金リスク管理
給付準備金リスクとは、年金債務(将来給付に必要な額)に対して、年金資産が不足するリスクです。
安定的に年金財政を運営し、将来にわたって確実に年金給付を行っていくためには、年金債務に見合う年金資産が保有されているかどうかという観点からリスク管理を行うことが、大変重要です。
農業者年金の財政方式は、法令に基づいて、確定拠出型の積立方式となっており、将来の年金額は、保険料の積立総額とその運用収入の額によって年金給付の原資が決まる仕組みです。このため、保険料積立中の被保険者に対しては年金債務は発生しません。年金額は年金給付の原資が確定した時に、年金数理により、年金額が決まりますので、受給権者に対して年金債務が発生します。
年金債務が発生する受給権者の経理では、資産運用(給付原資の運用)を国債運用とした上で、債務と資産を一致させることを基本に、運用資産のキャッシュ・フローが債務のキャッシュ・フローにできるだけ一致するような運用に努めています。このため、金利変動があっても年金債務も運用資産も評価額が基本的には同じ方向(プラスの方向またはマイナスの方向)に同じ額だけ変動しますので、金利変動の影響を受けにくい方式となっています。
当基金では、こうした方式で年金債務に対して年金資産が不足するリスクを抑制しています。資産運用リスク管理
主な資産運用リスクの定義と管理
市場リスクとは、金利、株価、為替等が変動し、マイナス運用となるリスクです。
当基金では、農林水産大臣認可を得て定めた運用の基本方針の中で、市場リスクの比較的小さい国内債券を中心に国内株式、外国債券、外国株式を組み合わせた資産構成割合をあらかじめ決めており、その構成割合に沿って分散投資し、市場リスクを一定の範囲内に抑制しています。
被保険者が65歳になった時に年金額を決定(年金裁定)する際に、仮にマイナス運用の影響で年金給付の原資が保険料総額を下回るような場合には、危険準備金(付利準備金)からその分を補填する仕組みも備えています。付利準備金は一定以上の運用利回りであったときに、あらかじめ決めたルールで少しずつ積立てているものであり、65歳年金裁定時の補填財源として十分な水準の額を現在確保しています。流動性リスク管理
流動性リスクとは、給付に必要な現金を調達できないリスクです。 リスク管理の取組み
当基金では、受給権者の経理で保有する給付原資は国債であり、給付のため換金する場合の流動性リスクを抑制しています。アップデート!非財務情報開示の今 第8回 非財務情報の開示を巡る国内外の動向(2022年1月~3月の動向)
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ハイライト
※WEB上の機能制限により レイアウトや箇条書きの表示など 原稿とは異なる場合があります。ご了承ください。
I.はじめに
- 金融審議会/Disclosure Working Group(以下「DWG」という。)における審議
- 経済産業省/非財務情報の開示指針研究会における討議
- 欧州財務報告諮問グループ(以下「EFRAG」という。)によるサステナビリティ報告基準の作業文書の公表
- 自然関連財務情報開示タスクフォース(以下「TNFD」という。)によるフレームワークベータ版(v0.1)の公表
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II.金融審議会/DWGにおける審議
- 「サステナビリティ情報」について、以下の取組みを並行して進めていくことについてどう考えるか
- 有価証券報告書にサステナビリティ項目に関する「記載欄」を設け、当初の開示項目として、「ガバナンス」と「リスク管理」は全ての企業が開示し、「戦略」と「指標と目標」は各企業が重要性を判断して開示する。
- 任意開示等において、気候変動関連の開示の質と量の充実を促す。
- サステナビリティ基準委員会(以下「SSBJ」という。)において、ISSB審議会等への意見発信を進めつつ、日本における実務面も踏まえた検討を進める。
- SSBJの検討結果を踏まえ、DWGで改めてサステナビリティ開示の個別項目の取り扱いを議論するとともに、SSBJの役割の明確化に向けた検討を進める。
- 中長期的な課題として、サステナビリティ開示における保証の在り方に関する検討を進める。
- 中長期的な企業価値向上における人材戦略の重要性を踏まえた「人材育成方針」(多様性の確保を含む。)や「社内環境整備方針」の開示を求める。
- 上記の「方針」と整合的で測定可能な指標の設定、その目標及び進捗状況の開示を求める。
- 企業の多様性確保に係る指標として、中長期的な企業価値判断に必要な項目の開示を求めるとしたうえで、企業負担等の観点から、他の法律の定義・枠組みに従って開示する。
III.経済産業省/非財務情報の開示指針研究会における討議
2021年6月から、経済産業省に設置された非財務情報の開示指針研究会(以下「非財務研究会」という。)で、非財務情報の開示指針の方向性について認識の共有を行いつつ、非財務情報の利用者との質の高い対話につながる開示、及び開示媒体の在り方について検討がされている。2022年2、3月はISSB審議会のTechnical Readiness Working Group(以下「TRWG」という。)が公表したサステナビリティ関連財務情報開示の全般的な要求事項のプロトタイプ、及び気候関連開示プロトタイプに関する議論が行われた。
IV.EFRAGによるサステナビリティ報告基準の作業文書の公表
EUでは、2023年または2024年度からサステナビリティ情報の開示要求を大幅に拡充する方向で、指令の策定(Corporate Sustainability Reporting Directive:CSRD)に向けた検討が進められている。CSRD案では、新たに策定されるサステナビリティに係る報告基準に準拠して情報を作成することとされているが、この報告基準に係る作業文書が、EFRAGから2022年1月より続々と公表されている。
図表1:欧州サステナビリティ報告基準の一覧(2022年1月時点)
- 一般的な要求事項
- 戦略及びビジネスモデル
- サステナビリティに関するガバナンスと組織
- サステナビリティに関する重要なインパクト、リスクと機会
- 方針、目標、行動計画及びリソースに関する定義
- 自社の従業員
- 自社の労働環境
- 自社の機会の平等
- 自社の労働関連の権利
- バリューチェーン上の従業員
- 影響を受けるコミュニティ
- 消費者、最終利用者
- ガバナンス、リスク管理、内部統制
- 製品・サービス、取引先との関係の管理・質
- 責任ある事業慣行
- セクター分類
※開示すべきセクター別情報は、ESRS SEC2からESRS SEC41において決定される(ESRS SEC1 1項より)。
(出所:PTF-ESRS Batch リスク管理の取組み 1 working papers-Cover note and next stepsより筆者作成)
V.TNFDによるフレームワークベータ版(v0.1)の公表
1.TNFDとは
まず、本ガイダンスの公表主体である自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures:TNFD)について説明する。TNFDは、世界の金融の流れを自然にとってマイナスの結果からプラスの結果へとシフトさせるようサポートすることを究極の目的として、自然資本及び生物多様性に関するリスクや機会を適切に評価し、開示するための枠組みを提供することを目標とした国際的な組織である。TCFDに続く枠組みとして、2019年に世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で着想され、2021年に立ち上げられている。日本では、環境省がTNFDの議論をサポートするステークホルダーの集合体であるTNFDフォーラムに参加している。
2.TNFD自然関連リスクと機会管理・情報開示フレームワーク
(3)自然関連リスクと機会を評価するためのLEAP(Locate、 Evaluate、 Assess、 Prepare:発見、診断、評価、準備)プロセス
(出所:TNFD自然関連リスクと機会管理・情報開示フレームワーク ベータ版v0.1リリース エグゼクティブサマリー(日本語)P4より抜粋、一部追記)
(1)自然を理解するための基本(となる知識)
ここでは、自然、依存関係と影響、及び自然関連リスクと機会に関するTNFDの定義を示している。TNFDでは、自然を4つの領域(陸、海、淡水、大気)で構成されると定義し、環境資産(森林、湿地、サンゴ礁、農地など)を地球に自然に存在する生物と非生物の構成要素と定義している。また組織がビジネスプロセスを機能させるうえで依存している生態系サービス(清潔で定期的な水の供給など)を依存関係と定義している。組織は、環境資産や生態系サービスに対してプラスにもマイナスにもなる影響を与えるが、これにより将来の自然関連リスクと機会を生み出す可能性があるとしている。(2)TNFDによる情報開示の提言(草稿版)
情報開示に関するTNFDの提言は、TCFDが既に提案した内容に基づいている。すなわち、図表2のように、情報開示に関するTCFDの4つの柱であるガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標に沿ったものとなっている。なお、指標と目標の温室効果ガスの開示については現在検討中であり、次版以降のベータ版に含められることが予定されている。図表2:情報開示に関するTNFDの提言(草稿版)
(出所:TNFD自然関連リスクと機会管理・豊穣開示フレームワーク ベータ版v0.1リリース エグゼクティブサマリー(日本語)P6より抜粋)
(3)自然関連リスクと機会を評価するためのLEAPプロセス
TNFDの提言には、LEAP(Locate、 Evaluate、 Assess、 Prepare:発見、診断、評価、準備)と呼ばれる自然関連リスクと機会に関する統合評価プロセスが含まれている。LEAPアプローチは、次の4つの中核的な分析アクティビティのフェーズから構成されている。(出所:TNFD自然関連リスクと機会管理・情報開示フレームワーク ベータ版v0.1リリース エグゼクティブサマリー(日本語)P7より抜粋)
VI.SECによる気候変動情報開示規則案の公表
一部の大企業 [2] には、Scope1、2の温室効果ガス排出量について、当初、限定的保証業務を受けるほか、数年経過後に合理的保証業務を受けることが提案されている。現行の温室効果ガス排出量に対する保証業務は限定的保証業務がほとんどであるため、本規則案がそのまま最終化された場合には、開示を行う企業及び保証業務を提供する監査事務所等の双方への影響が大きいものと考えられる。
VII.ISSB審議会によるIFRSサステナビリティ開示基準の公開草案の公表
ISSB審議会は、3月31日に、公開草案「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的な要求事項(IFRS S1)」及び「気候関連開示(IFRS S2)」を公表した(以下「全般的な開示基準」及び「気候関連開示基準」という。)。本公開草案は、本稿3.でも触れた、TRWGによって作成されたサステナビリティ関連財務情報開示の全般的な要求事項のプロトタイプ及び気候関連開示プロトタイプをベースに、全般的な開示基準では定義の明確化、気候関連開示基準では移行計画及びカーボンオフセットに関する情報開示、シナリオ分析の要求事項などが追加されている [3] 。
VIII.おわりに
有限責任 あずさ監査法人
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(くりたに しゅうすけ)
早稲田大学理工学部卒業。日本長期信用銀行、興銀証券にてリスク管理、金融商品開発に従事。その後データ・フォアビジョンにて、リスク管理ITの企画設計・開発、データサイエンス、コンサルティングを行う。2011年キャピタスコンサルティングに参加。
資格 : 公認内部監査人(CIA)。公認情報システム監査人(CISA)。
書籍 :「市場リスク・流動性リスクの評価手法と態勢構築」、「【全体最適】の銀行ALM」、「金融リスクマネジメントバイブル」、「リスクマネジメントキーワード170」(きんざい)など著書多数。・オンライン受講ガイドをダウンロードいただき受講の流れを必ずご確認ください。
・開催1営業日前の13時にメールで視聴URLとPDF資料のご案内をお送りします。(ハンズオンセミナーなど補足事項欄に送付日の記載がある場合にはそちらに準じます)
・ご使用PC、ネットワークにかかるセキュリティ制限がある場合、ご視聴ができない場合がございますので事前に社内ご担当部署等にご確認をお願いします。【本セミナーで得られること】
・財務リスクとの違いの理解及び主な非財務リスクの概要・事例
・非財務リスク管理態勢構築のための具体的なアプローチ
・今後の展望(非財務リスク計量化、サステナブル開示との連携など)2.主な非財務リスクと銀行を中心とする事例
(1)オペレーショナルリスク
(2)コンダクトリスク
(3)サイバーリスク
(4)サードパーティーリスク
(5)気候変動リスク3.非財務リスク管理態勢構築の実践
(1)非財務リスク管理の基本方針
(2)リスクマップとトップリスクアプローチ
(3)KRIとシナリオ分析
(4)COSO-ERMの有効活用
(5)リスク管理(2線)と内部監査(3線)の連携4.今後の方向性
(1)非財務リスク計量化の可能性
(2)リスクアペタイト・フレームワークへの組み込み
(3)サステナブル開示(ISSB、SSBJ)の動向と連携
(4)サステナブルな企業価値向上に資するリスクマネジメント【視聴のご案内】
開催1営業日前の13時にメールで視聴URLとPDF資料のご案内をお送りします。
開催1営業日前の12時以降にお申し込みの場合は視聴に関するご案内の配信にお時間をいただく場合がございますので予めご了承ください。
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